最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1603号 判決 1949年3月22日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人武田弘、渡辺敏夫両名の辯護人小田切秀の上告趣意並びに被告人坂本章一の辯護人井川伊平の上告趣意第一鮎及び第二點について。
原判決が證據に引用した第一審公判調書中の相被告人杉本信夫の供述によれば、被告人等四名は成田政勝方から衣類を盗もうと相談した上更に被告人坂本章一は「その家には男は誰も居らないから若し妻君が目でも醒ましたらジタバタするなとか默って居れとか言え、そうすれば相手は女だから大丈夫だ」と発言し、他の被告人等三名がこれに同意したことを認めることができるのであって、右の相談は妻女が目を醒ました場合に同人を脅迫して財物を強取しようとする強盗罪を共謀したものであることは言うまでもない。また、原審の認定したように被告人渡辺敏夫が板戸越しに成田初江に對し「旅の者だ、俺は札幌の者だ、人殺しを知って居るだらう」「騒げば身が危いぞ」と申向けたことが強盗罪の脅迫に當ることも論のないところである。そして、強盗の共謀があったことが認められる以上、実際に脅迫に使用した文言が共謀のときに打合せた脅迫の文言と多少異なったからとて強盗罪の成立を妨げるものではない。
論旨は、いずれも原審の事実誤認を主張するに歸着するのであって、かゝる主張は上告の適法な理由とはならないから、採用することができない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑事訴訟法施行法第二條舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。
以上は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)